中小M&A事情

中小企業のM&A業界の事情、日常を紹介、解説するブログです

個人向きの小規模M&A案件を探すには?

「個人によるM&A」ブログ記事シリーズ第三弾です。

前回の記事(個人が会社を買い取ることが難しい2つの視点 - 中小M&A事情)では個人の方のM&Aについてやや辛口な内容になってしまいましたが、今回は個人の方が小規模M&A案件を(なるべく安価に)どのように探したらよいか、私見を述べてみます。

 

  • 公的支援機関である事業引継ぎ支援センターに相談してみる

主に後継者不在の中小企業経営者のための公的な相談窓口として、全国都道府県に「事業引継ぎ支援センター」が設置されています。こちらは経済産業省が「産業競争力強化法(旧産業活力再生法)」を根拠法として、2011年からスタートしている事業です。

 

<全国のセンターを統括している全国本部(中小機構)のサイト>

shoukei.smrj.go.jp

 

こちらの記事でも簡単に触れたように、センターでは会社同士のM&Aだけでなく、「後継者人材バンク」という創業希望者(個人)と後継者難の小規模事業者のマッチングサービスを行なっているセンターもあります。「後継者人材バンク」事業を行なっているのは全てのセンターでは無く、一部のセンターという点に注意です。

 

例えば1都3県で現時点で後継者人材バンク事業を行なっているのは神奈川県のみであり、また2016年12月開設とまだ日が浅い状況です。

 

<「後継者人材バンク」を行なっているセンターの例>

宮城県後継者人材バンク - (公財)みやぎ産業振興機構

ビーなび信州 - 長野県事業引継ぎ支援センター事業

神奈川県後継者バンク | KIP | 公益財団法人 神奈川産業振興センター

静岡県事業引継ぎ支援センター | 静岡県後継者バンク

沖縄県後継者人材バンク | 沖縄県事業引継ぎ支援センター

 

また、事業引継ぎ支援センターはもともと後継者難の事業承継の相談業務(方向性、選択肢の提供)が主たる業務であり、マッチング業務というのはあくまでサブ的な位置づけである点に留意が必要です。

 

小規模企業の案件が多いとはいえ、基本的には法人同士のマッチングが多いと思いますので、個人への紹介も可能かは事前に電話で確認した方が良いでしょう。

 

  • 民間企業による小規模案件のM&AマッチングサイトTRANBI

民間企業が運営しているM&A案件のマッチングサイトはいくつかありますが、実際にそれなりの情報量を有し、活気のあるサイトというのはそう多くないと思います。

 

私の観測範囲において最も情報量が多く、マッチングの数が多いサイトをご紹介します。

 

TRANBI[トランビ]というサイトです。ユーザー数が3,000名以上、累計M&A案件数500件以上、マッチング数(成約数ではなくコンタクトの数だそうです)1,000件以上と他の競合サイトを寄せ付けないボリュームの情報があります。

www.tranbi.com

 

こちらはもともとアスク工業という長野県の工業資材の販売会社が運営母体でしたが、2016年4月に分社化し、現在はアストラッドという法人が運営会社になっています。

 

気になる手数料ですが、売手側は無料、どころか成約するとお祝い金までいただけるという懐の深さです。(笑)

買手側は成約額の3%ということです。

ご利用料金について|M&AマーケットTRANBI【トランビ】

 

M&A業界の手数料体系は一般的にはレーマン方式というフィーテーブルがあり、ここでは詳しくは触れませんがディール額ごとに5%~4%~3%といった階段型の成功報酬を設定する形が多いです。

 

ただし、小規模案件の場合に問題になるのが、ほとんどの仲介会社が上記のパーセンテージの他に、「最低成功報酬金額」を定めている点にあります。

その最低成功報酬金額が500万円~1,000万円という金額で設定されている業者が多く、小規模案件だと割に合わないことになってしまいます。

 

その点、上記のTRANBIは最低成功報酬金額が設定されていないため、小規模案件でも馴染みやすいと言えます。

 

なぜそのような報酬体系の設定ができるかというと、

・売手/買手が直接交渉を行なう=仲介者が介在しないのでその分の費用がかからない

・TRANBI運営母体は別の本業の稼ぎがあるので、収益化するまで時間をかけられる

ということが推察されます。

 

実際に交渉を進めるときに、必要であればプロのM&Aアドバイザー(有償)を紹介してもらうこともできるようです。

 

具体的に買手として検討する、ということでなくとも、いろんなM&A案件の情報を見ているだけでもおもしろいですね。